ケヴェ・アルマの退団
10月22日のメラルコ・ボルツ戦以降、「個人の事情」により欠場が続いていたケヴェ・アルマだが、群馬クレインサンダーズとの2連戦を終えた翌朝、琉球ゴールデンキングスから退団が発表された。
アルマは昨季(2024-25)にキングスへ加入。
身体能力を活かしたプレーと高精度の3Pシュートでチームを支え、天皇杯優勝、西地区王座奪還、そして4年連続のファイナル進出に大きく貢献した選手だ。
この夏もNBAサマーリーグにも参戦し、一定の成績を残したものの、NBA契約には至らず。キングスで2シーズン目を迎える決断を下し、2年目の進化を期待されていた。
不明瞭な理由での欠場が続いていたことから、ある程度の予兆はあったものの、「退団」という発表には多くのキングスファン、そしてBリーグファンも驚きを隠せなかったはずだ。
今回は、そんなケヴェ・アルマの退団を受けて、キングスが今後どのような展開や選択肢を取るのか、整理して考えてみたい。
アルマとキングス
アルマは、22-23シーズンに新潟アルビレックスBBでプレーし、翌年は韓国KBLに移籍。24-25シーズンにアレン・ダーラムと入れ替わる形でキングスに入団した選手だ。
当時のキングスは、ジャック・クーリーとアレックス・カークの強力インサイドとウイングのローを擁するチームだったが、インサイドの2人は、クイックネスが弱点であり、ローもPFとしてプレーするには高さと重さの面に不安があった。
そんな中、加入したアルマは、206cmとサイズがありながら、クイックネスもあり、アウトサイドシュートも高確率で、まさに”ベストフィット”の選手だった。
実際、昨季はアルマを軸にしたバランスの良い3BIGを多用する試合もあり、天皇杯やリーグ戦でも結果を残せていた。
チャンピオンシップのセミファイナルで足首を捻挫してしまったが、松脇の神の右手がファイナル進出を呼び込んだことで、チームはファイナルに出場。
ファイナルでは、痛めた足が万全でない中、出場し、チームを救うチェイスダウンブロックや望みをつなぐ3Pシュートなど、チームのためにできることを全力でこなしてくれたが、最後の最後で得たフリースローを落としてしまい、優勝まであと一歩のところで涙をのんだ。
この夏には、昨年に引き続き、NBAサマーリーグのフィラデルフィア76ersでプレーし、NBA入りも期待されたが及ばず、キングスに戻って2季目を迎えることとなった。アルマの継続によって、外国籍選手が全員継続するキングス史上初のオフシーズンとなった。
今季は、メラルコ・ボルツ戦で欠場するまで、7試合に出場し、いずれもベンチからの出場ながら、11得点、4.1リバウンドを記録していた。

アルマの退団がキングス及ぼす影響
アルマが退団したことによって、キングスに及ぼす影響は小さくない。短期的視点、長期的な視点から考える。
短期的な影響
- インサイドプレーヤーの負担増加
アルマ退団の影響は、単にインサイドプレーヤーが1枚減り、他の選手のプレータイムが延びるということだけには収まらない。
前述したとおり、キングスのインサイドプレーヤーはペイントエリアでは敵なしでも、外に引き出されると足を狙われてしまう。これまで、PnPなどストレッチビッグのマッチアップはアルマが大半を担ってきたが、そのアルマが抜けたことで、カークやクーリーがストレッチビッグのマッチアップをせざるを得ない状況が発生してしまう。
2人が外に引き出されることでのディフェンスリバウンド奪取率への影響や、オフェンスでのスペーシング問題も発生する。 - セカンドユニットの得点力不足
今季のキングスは、岸本とローが下がっている(≒セカンドユニット)の時間帯の得点力不足が深刻な課題となっている。現状、脇も右手の怪我で離脱しており、オフェンス面で起点となれる選手が限られているため、オフェンス面で起点になれるアルマは貴重であったが、それが退団によって失われる事態となる。
アルマが抜けた3試合では、ラインナップの変更によって誤魔化しつつ、対応しているが、セカンドユニットが流れを引き渡してしまう展開も多く、スターターメンバーにかかる負担も大きくなっている。 
長期的な影響
アルマは26歳とバスケットボール選手としては若く、これから全盛期を迎えていく選手で、キングスとしても長期的な保有を考えていたはずだ。特に、来季から始まるB.PREMIERでは、サラリーキャップ制度が導入され、選手に使える金額も制限が出てくる。クーリーやローと比較して、実績的にはまだ浅いアルマは、金銭的にもコントロールしやすいと思っていたので、このタイミングで一度チームを離れてしまうのは、キングスの長期的計画にも影響があると考えている。
求める人物像
アルマの退団によって、外国籍選手枠に1枠空きができたキングスは、今後確実に新たな外国籍選手の獲得に動く。そこで、アルマの穴を埋めるために、新しい選手に求める条件について整理してみたい。
- アウトサイドシュートが上手い
シュートレンジが3Pライン外まであり、一定以上の確率で決めれることは、絶対条件と言っても良い。繰り返しになるが、キングスにはカーク、クーリーというペイントエリアを主戦場とした強力なビッグマンがインサイドに陣取っているため、スペースを広げられる選手、すなわちアウトサイドシュートが上手い選手である必要がある。 - リバウンドに飛び込むことができる
カーク、クーリーというインサイドでリバウンドを取ってくれるビッグマンが居るとはいえ、リバウンドは全員で取りに行く必要がある。特に、カーク、クーリーはリング下付近のボールは拾えても、ロングリバウンドは拾えない。チームメイト任せにならず、リバウンドへの意識が強い選手であれば、サイズ(身長的基準)は特に問わない。(ダーラムやギブスのようなアンダーサイズの選手例もあるので) - ウイング/ビッグマン両方にマッチアップできる
再三言及しているが、カーク、クーリーはペイントエリアこそ最強のプレーヤーだが、外に引き出されると弱点が露呈する。Bリーグの外国籍選手には、インサイドプレーヤーながらアウトサイドシュートが上手い選手(ブラックシアー、クリーナーetc..)も増えてきており、それらの選手に対して、インサイドでは押し負けず、アウトサイドではコンテストに行くことのできる選手である必要がある。また、アルマがそうだったように、ウイングの外国籍選手に対しても、ある程度マッチアップできるクイックネスとアジリティとパワーを兼ね備えた選手が理想である。 - キングスのカルチャーを理解し、精神的に成熟している選手
沖縄という特性や、キングスがこれまで積み上げてきたカルチャーを理解し、自らもその一員になることができるか。特に、シーズン途中からの加入となるため、フィットするには時間がかかるが、思い通りにいかない時期があっても、他に原因を探すのではなく、解決に向けて、チームメイトとコミュニケーションを図れる選手。
思うような笛やプレーができなくても、レフリーや相手に当たるのではなく、自らに矛先を向けて、切り替えられる精神的に成熟している選手。 
キングスの選択肢
キングスがアルマに代わる新たな選手を獲得することは間違いないが、問題は”いつ”獲得するかである。3つの選択肢を可能性が高いと思う順に挙げてみたいと思う。
【高】現行メンバーで戦い、バイウィーク明けに補強
Bリーグは11月第3週の終了後、代表活動によってバイウィークに入る。
キングスはその期間までに9試合(三河、越谷×2、富山、三遠×2、大阪、京都×2)を戦うことになるが、この9試合を現行メンバーで乗り切り、バイウィーク中に新戦力を獲得するという選択肢だ。
タイトなスケジュールのなかで一人ひとりの負担は増すが、この状況だからこそ、各選手がステップアップする機会(チャンス)にもなる。
ミッドウィーク開催が続く現状では、新加入選手が戦術理解を深める時間も限られるため、シーズン途中の即戦力補強にはリスクもある。
その意味では、チームとしての一体感や完成度を優先し、既存メンバーで戦い抜く判断は理にかなっているはずだ。
【中】短期の緊急補強を行い、バイウィーク明けに“本命”
もう一つ考えられるのは、短期契約での緊急補強を行い、バイウィーク明けに本命の選手を獲得するという選択肢だ。
今季のキングスはEASLにも参戦しており、他クラブに比べて試合数が多く、移動による疲労も蓄積している。この状況を考えると、ローテーションを維持するための短期的な補強に動く可能性もある。
特に、日本でのビザをすでに持つ選手であれば、短期間の契約は現実的だ。
ただし、今季B1でプレー経験のあるフリー選手はほぼおらず、レベル面では限界がある。
多少のレベル差を許容してでも、主力の負担を減らすための“つなぎ補強”に踏み切るかどうかが焦点になる。
【低】バイウィークまでに穴を埋める選手の獲得
最後に考えられるのは、バイウィークまでに海外から即戦力を呼び寄せる選択肢だ。
しかし、ビザの取得やメディカルチェックなどの手続きに時間を要するため、合流までのタイムラグは避けられない。
さらに、アルマ退団が急な決定(ロッカーの荷物やメラルコ戦のロスター登録)だったことを踏まえると、事前に交渉が進んでいた可能性も低い。
したがって、海外選手の獲得は最も不透明で、早くても合流はバイウィーク明けで、バイウィーク前に合流することは難しいだろう。
【番外編】他クラブの動向を待つorレンタル獲得
可能性【高】に関連する話だが、他クラブの中には、IL含めて4人以上の外国籍選手を抱えているクラブも複数ある。ILに入っている選手が復帰するタイミングで、ロスターから漏れる選手がでるはずなので、他クラブの動向にも注目する必要がある。
また、昨季B3から平良彰吾を期限付き移籍で獲得したように、外国籍選手をB2やB3の下位カテゴリから獲得する可能性も無くはない。(B1未経験でB2、B3の選手は未知数なことも多いが)
感謝
急遽、別の道を進むことになってしまったことは大変残念ではあるが、
アルマはXとInstagramに次のような投稿をしている。
Hi Ryukyu Golden Kings Fans, I wanted to update you. I know it was sudden me leaving the team but I had some personal reasons for coming home. I am doing well and hope to be back to Japan in the future. My time with Ryukyu has been very special. God Bless 🙏🏾
— Keve Aluma (@AlumaKeve) October 26, 2025
翻訳
ハイ、琉球ゴールデンキングスのファンの皆さん、近況をお知らせしたくて。突然チームを離れることになってしまったけど、個人的な理由で帰国する必要があったんだ。今は元気にしてるよ、そしていつかまた日本に戻りたいと思ってる。琉球での時間は本当に特別だった。神のご加護を
アルマの言葉通り、またいつか日本に戻ってくるとき
そのチームが琉球ゴールデンキングスだと良いなと思っている。
アルマとキングスの今後に幸多からんことを。
  
  
  
  

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